「さらに言えば」基礎自然科学における「リーマンショック」は近いかも知れない

Scientific American誌のブログにて、バージニア大学の病理学教授であるジェームス・ジムリング氏は、2019年時点での科学研究のシステムが、サブプライム住宅ローン危機のような事態を招きかねないとして警告して … “「さらに言えば」基礎自然科学における「リーマンショック」は近いかも知れない” の続きを読む

Scientific American誌のブログにて、バージニア大学の病理学教授であるジェームス・ジムリング氏は、2019年時点での科学研究のシステムが、サブプライム住宅ローン危機のような事態を招きかねないとして警告している。

We’re Incentivizing Bad Science – Scientific American Blog Network
https://blogs.scientificamerican.com/observations/were-incentivizing-bad-science/

「弱い証拠をもとにたくさん刺激的な論文を発表する人」が「長い時間をかけて十分な証拠を集めて数少ない論文を 発表する人」よりも報われ、自分以外の科学者や企業がフォローアップ研究を行ってくれ、論文を発表した科学者がリスクを負わなくてよい世界が、科学界でサ ブプライム・ローン危機を起こしうる状況だとジムリング氏は指摘する。

科学研究の再現性が危機に瀕していることは、これまでにもたびたび指摘されてきた。研究者のいうままに、大々的にプレス発表された「大発見」も、その2年後の国際会議では統計精度が上がって有為性が消えてしまった例など、これまで幾つもあった。いわゆる「出版バイアス」の問題で、否定的な正しい研究結果は一般大衆の耳に届かない。このシステムのメカニズムを多かれ少なかれ利用する研究者もいるように思える。

ジムリング氏の警告は科学の問題の現状を捉えて的確だ。「さらに言えば」現存するインセンティブの構造を変えるためにリーダーシップが取られない限り、そして、科学を扱うマスコミがもっと大局的で中立な立場で真実を報道しない限り、基礎科学における「リーマンショック」が起こる日が近いのかも知れない。