「在るということ」「無いということ」

文系のためのめっちゃやさしい無とは何か

佐々木 真人 (監修)

現代物理での「無」の考え方が、知識ゼロでも読める超入門書。数字のゼロから、無の空間「真空」、宇宙を生んだ究極の「無」まで、大学の先生と文系サラリーマンの対話形式でわかりやすく解説する。偉人のエピソードも紹介。

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 「私は,海辺で遊んでいる少年のようである。ときおり,普通のものよりもなめらかな小石やかわいい貝殻を見つけて夢中になっている。真理の大海は,すべてが未発見のまま,目の前に広がっているというのに」。
 この出版社名にもなっている,偉大な物理学者アイザック・ニュートンは,自然の真理の奥深さを例えて,そういいました。真理に向かう人の,ひた向きで純粋な情熱と畏敬が表れていて,私の好きな言葉です。
 自然や宇宙は現に存在している。われわれはそう思います。しかし,その「在るということ」の意味を深めようとすると,必ず「無いということ」の真相が重要な鍵になってきます。皆さんは,この本のあちこちで,科学者が「存在」や「現象」を理解しようと苦悩の末に「無」の真相に導く“ 美しい小石や貝殻” を発見してきたということに気づくはずです。
 およそ138 億年前に宇宙が「無」から誕生し,今の「存在」の大半が,見えない暗黒物質や暗黒エネルギーだといわれています。「何も無い」世界は,実は「沸き立つ無限のエネルギー」で満ちている。何やら禅問答のようですが,現代物理学のたどり着いた自然の描像です。
  ニュートンは,こうもいっています。「私が遠くを見ることができたのは,巨人たちの肩に乗っていたからです」。美しい真理の“ 小石や貝殻” も,科学者らの不断の探求によって,いまや岩山のようにそびえたっていると思えるかもしれません。でも,心配いりません。この本で,すっと巨人たちの肩に乗ってしまいましょう。素晴らしい“ 真理の大海” が目の前に広がるはずです。

監修
東京大学 宇宙線研究所准教授
佐々木 真人

ーーー 本書「はじめに」より ーーー